兄弟でもめない実家じまい|話し合いと分け方の整理

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親の家をどうするか。家族で話し合おうとするたびに、気まずくなる。そんな経験のある方は少なくない。

「任せる」と言ったきり動きが揃わない家族。費用の負担が曖昧なままの関係。誰が主導するかも決まらず、実家だけが空き家のまま残っていく。

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目次

兄弟でもめやすい場面は、だいたい決まっている

実家じまいをめぐるトラブルを整理すると、いくつかのパターンにまとめられる。

「誰が主導するか」が曖昧なまま進む

親が施設に入ったとき、あるいは亡くなったとき、最初にぶつかるのが「誰がやるのか」という問題だ。

長女だから当然、という空気。近くに住んでいるから、という理由。それが明文化されることなく、なんとなく一人に集中する。主導した人間が「自分ばかり負担している」と感じ、動かない兄弟に不満が積もる。これが最初のもめどころになる。

実家への思い入れの「温度差」

実家で育った記憶は兄弟でも異なる。親と距離を置いてきた兄弟は「さっさと売ればいい」と思う。一方、親の介護に関わってきた人間は「もう少し待ってほしい」と感じる。

この温度差は、どちらが正しいわけでもない。ただ、温度差があることを認識しないまま話し合うと、感情的な衝突になりやすい。

費用と手間の分担が不公平に感じられる

実家の維持には費用がかかる。固定資産税、光熱費の基本料金、建物の管理費用。片付けの人手も必要だ。これらを一人が立て替え続けると、やがて「私だけ損している」という気持ちが育つ。

費用の分担を早めに決めておくことは、もめごとを減らすうえで効果が大きい。

遺産の「取り分」をめぐる認識のズレ

相続が発生した場合、実家の評価額をどう見るかで兄弟間に差が生じることがある。「実家を相続した代わりに他の財産は放棄する」「介護を担った分、多く受け取るべき」という主張が交錯する。

法定相続分という基準はあるが、それだけでは解決しない感情の部分がある。

出典国税庁 タックスアンサー No.4152nta.go.jp

話し合いの前に、一人で整理しておくこと

兄弟との話し合いをうまく進めるには、自分の中を先に整理しておくことが助けになる。

「自分はどうしたいか」を言葉にする

「なんとかしなければ」という焦りはあっても、自分がどうしたいかを言葉にできていない人は多い。

売りたいのか、しばらく保有したいのか、誰かに住んでほしいのか。まず自分の希望を整理する。希望が曖昧なまま話し合いに臨むと、相手のペースに引きずられやすい。

実家の現状を把握する

話し合いを具体的に進めるには、事実の共有が必要だ。

  • 固定資産税はいくらか
  • 名義は誰か(親のままか、すでに相続されているか)
  • ローンは残っているか
  • 建物の状態はどうか(雨漏り、傾きなど)

これらを事前に整理しておくと、感情論になりにくい。

相続の基礎を押さえる

相続が発生している場合、法定相続分の基本を押さえておくと話し合いの土台になる。兄弟(第3順位)の場合と、親が亡くなって配偶者と子が相続する場合では分け方が異なる。

実家をどう分けるかの進め方については、遺産分割協議の進め方にまとめている。


実家の「分け方」として選べる4つの方法

実家じまいの方向性は、大きく4つに整理できる。どれが正解かは、家族の状況によって異なる。

1. 売却して現金を分ける(換価分割)

実家を売却し、売却代金を相続人で分ける方法。現金なので公平に分けやすく、揉めにくい。

ただし、全員が売却に同意する必要がある。一人でも「売りたくない」という人がいると進められない。

2. 一人が取得して代償金を払う(代償分割)

兄弟の一人が実家を取得し、他の相続人に相当額の現金を支払う方法。実家に住み続けたい人がいる場合に向いている。

取得する側に、代償金を支払える資力があることが条件になる。評価額をいくらとみるかでもめることがある。

3. 共有名義で相続する(共有分割)

全員の名義で相続する方法。決断を先送りにできるが、後々のリスクが大きい。

共有名義の実家を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要だ。将来、共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらに細分化される。意思決定がどんどん難しくなる構造になる。

共有名義の詳しいリスクと対処法は、共有持分の実家をどう扱うかで整理している。

4. 相続放棄する

出典裁判所 相続の放棄の申述courts.go.jp

相続放棄を選ぶと、実家を含む相続財産を一切受け取れない。他に借金等の負の財産がある場合に検討される。

放棄した持分は他の相続人に移るため、兄弟全員が放棄すると次の相続順位(兄弟姉妹の子など)に移っていく。家庭裁判所への申述が必要で、相続開始を知った日から原則3か月以内という期限がある。

出典法務局moj.go.jp

共有名義にするときのリスク

「とりあえず共有で」は、後のトラブルの種になることが多い。

売却・賃貸に全員の合意が必要

共有名義の不動産を売却するには、原則として持分を持つ全員の同意がいる。兄弟の一人が連絡不通になる、認知症になる、亡くなって相続人が増える、という状況が重なると、意思決定が事実上できなくなる。

固定資産税の支払い義務は続く

共有名義であっても、固定資産税の支払い義務はなくならない。市区町村から代表者に請求が来る形が多く、立て替えた人間と他の共有者の間でトラブルになることがある。

持分だけの売却は可能だが買い手が限られる

共有持分のみを売却することは法的には可能だ。ただし、一般の買主には敬遠されやすく、売却先は専門の業者に限られることが多い。価格も市場価格より低くなる傾向がある。

「共有名義になってしまったが、どう動けばよいか」という状況の整理は、共有持分の実家をどう扱うかを参照してほしい。


話し合いを進めるための、小さなステップ

「兄弟と話し合おう」と思っても、なかなか動き出せない。そういうとき、最初のハードルを下げることが助けになる。

「決める会議」ではなく「共有する連絡」から始める

いきなり「売るかどうか決めよう」と切り出すと、相手が身構える。まず「実家の固定資産税が年◯万円かかっているから、一度状況を共有したい」という形で始める方が、感情的な衝突を避けやすい。

事実を共有することから始める。それだけで、話し合いの温度が変わることがある。

書面で残す習慣をつける

口頭で決めたことは、時間が経つと「言った・言わない」の問題になる。LINE でもメールでも、記録として残る形なら形式は問わない。決めたことを文字に残しておく習慣が、後のトラブルを減らす。

専門家を間に入れることも選択肢

兄弟間の感情が先に立って話し合いが進まないとき、第三者を間に入れることが有効な場合がある。

司法書士や行政書士は、相続手続きの書類作成を担う。遺産分割の合意形成には弁護士が関わることもある。費用はかかるが、長期化するトラブルに比べれば、早期に専門家に相談した方が結果的に負担が小さいことも多い。


よくある疑問

親がまだ生きているのに実家の話を兄弟と進めてもいい?

親が元気なうちに話し合いを始めることは、むしろ望ましい。遺言書の有無を確認したり、親の意向を聞いておいたりすることで、相続発生後の混乱を大きく減らせる。「親の前で遺産の話をするのは不謹慎」という感覚は根強いが、話し合いを先送りにした結果、家族関係がこじれるケースは少なくない。

兄弟の一人が「実家に住みたい」と言っている。どう整理すればいい?

住みたい人が実家を単独で取得し、他の兄弟に代償金を支払う「代償分割」が一般的な方法になる。取得する側の資力と、実家の評価額をどう算定するかが主な論点になる。評価額は不動産業者への査定依頼で把握できる。代償金の水準は、査定額をベースに兄弟間で話し合って決める。

相続登記はいつまでにしなければいけない?

2024年4月1日から相続登記が義務化された。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要がある。2024年4月より前に相続した不動産も、2027年3月31日までの申請が必要だ。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となる。

出典政府広報オンラインgov-online.go.jp
兄弟と連絡が取れない。実家をどうすればいい?

共有者の一人が行方不明の場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法がある。この管理人が代理人として遺産分割協議に参加できる。時間と費用がかかるため、早めに弁護士や司法書士に相談することを勧める。

実家の売却価格の相場は、どうやって調べればいい?

複数の不動産業者に査定を依頼することが出発点になる。一社だけだと比較できず、価格の妥当性を判断しにくい。査定は売却を決定するものではなく、状況把握のための情報収集として活用できる。


まとめ

兄弟でもめる根本には、温度差・情報の偏り・役割分担の曖昧さがある。感情論になりやすい話題だが、事実を共有することから始めると、話し合いの入り口を作りやすい。

分け方の選択肢(売却・代償・共有・放棄)を把握するだけで、話し合いの見通しが立ちやすくなる。共有名義は後のトラブルを生みやすいため、できれば早めに方針を決めることが将来の負担を減らす。

一人で抱え込む必要はありません。まず、自分の気持ちと実家の現状を整理することが、次の一歩になります。

気持ちの整理がついたら、次は具体的な売却・活用の手順を確認しておくと動きやすくなる。実家じまい診断で、自分の状況に合った選択肢を確認できる。

診断は「決断」ではなく、「自分がどういう状況にいるか」を見える形にするための道具として用意しています。売却の方向性を検討するのは、家族の方針が揃ってからの段階でも遅くありません。



出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の基礎控除」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
  • 政府広報オンライン「相続登記が義務化されます」
    https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/2.html
  • 法務局「相続登記の義務化について」
    https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
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