相続税の不動産評価|路線価・倍率方式と実額計算

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相続税評価額とは何か・期限との関係

相続税評価額とは、相続税を計算するために国が定めたルールで求める財産の価額です。実際に売れる価格(時価)とは一致しません。

不動産の場合、次のように分かれます。

  • 土地: 路線価方式または倍率方式
  • 建物(家屋): 固定資産税評価額と同額

土地の評価は、市場価格そのものではなく、公示地価(国が公表する標準的な地価)の8割程度に設定される路線価をもとにします。実勢価格より低めに出るのが一般的な特徴です。

評価は相続税申告のために必要ですが、申告そのものにも期限があります。相続税の申告・納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。この間に財産を把握し、評価を確定させ、納税資金を準備する必要があります。

あわせて、相続登記(不動産の名義を相続人に変更する登記。2024年4月から義務化)にも期限があります。2024年4月1日以降、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務です。施行前に相続した不動産も、2027年3月31日までに申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

出典政府広報オンラインgov-online.go.jp

相続登記 過去分申請期限 まで

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相続税の申告は10か月、登記は3年(過去分は2027年3月末)と、期限が別々に走ります。混同しないよう、それぞれ確認します。

土地の評価: 路線価方式と倍率方式

土地の相続税評価は、路線価方式か倍率方式のどちらかで行います。まず、対象地に路線価が設定されているかを国税庁の路線価図で確認します。

路線価方式の計算

路線価が設定されている市街地では、路線価方式を使います。基本の式は次の通りです。

路線価 × 各種補正率 × 面積(㎡)= 評価額

路線価は、道路ごとに1㎡あたりの価額を千円単位で示したものです。たとえば路線価図に「300D」とあれば、その道路に面した土地は1㎡あたり30万円が基準になります(末尾のアルファベットは借地権割合を示す記号)。

150㎡の土地で路線価が30万円なら、補正がない前提で概算は次のようになります。

30万円 × 150㎡ = 4,500万円

実際には、土地の形状や条件によって補正がかかります。

  • 奥行価格補正: 奥行が極端に長い・短い土地の減額
  • 不整形地補正: いびつな形の土地の減額
  • 角地の加算: 二方向の道路に接する土地の増額(側方路線影響加算)

これらの補正は路線価図・評価倍率表とあわせて国税庁が定める率表で確認します。

出典国税庁 路線価図・評価倍率表rosenka.nta.go.jp

倍率方式の計算

路線価が設定されていない地域(郊外や農村部など)では、倍率方式を使います。式は次の通りです。

固定資産税評価額 × 倍率 = 評価額

固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の課税明細書に記載されています。倍率は地域・地目ごとに国税庁の評価倍率表で定められています。

固定資産税評価額が800万円、倍率が1.1なら、評価額は次の通りです。

800万円 × 1.1 = 880万円

倍率方式は路線価方式より計算がシンプルですが、地目(宅地・田・畑など)ごとに倍率が異なるため、明細書の地目と倍率表の対応を確認します。

小規模宅地等の特例に注意

被相続人が住んでいた自宅の土地などは、一定要件を満たすと評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」の対象になる場合があります。減額幅が大きく、相続税の有無を左右します。適用要件は複雑なため、該当しそうなときは税理士に確認します。

出典国税庁 タックスアンサー No.4152nta.go.jp

建物の評価: 固定資産税評価額をそのまま使う

建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額です。土地のような路線価計算は不要です。

固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書、または市区町村で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。新築時の建築費より低く、経過年数に応じて下がっていくのが通例です。

貸家(他人に貸している建物)の場合は、借家権割合を差し引いた評価になり、自用の場合より低くなります。マンションの場合、専有部分の建物評価に加え、敷地権として土地の持分も評価対象になります。

建物は土地と違い補正計算が少ないため、課税明細書の金額をそのまま押さえておくのが出発点です。

相続税がかかるかどうか: 基礎控除のライン

不動産の評価額が出たら、他の財産(預貯金・有価証券など)と合算し、相続税がかかるかを確認します。判断の分かれ目が基礎控除です。

相続税の基礎控除額は次の式で計算します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

課税対象となる遺産総額がこの基礎控除額を下回れば、相続税は課されず、申告も原則不要です(配偶者の税額軽減など一部の特例を受ける場合を除く)。

出典国税庁 タックスアンサー No.4152nta.go.jp

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、基礎控除は次の通りです。

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

遺産総額が4,800万円以下なら相続税はかかりません。ここで使う遺産総額は、時価ではなく相続税評価額で計算する点が重要です。土地は路線価ベースで実勢より低く出るため、市場感覚で「うちは相続税がかかる」と思い込む前に、評価額での計算が必要です。

なお、遺産分割協議そのものに法律上の期限はありません。ただし2023年4月1日施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として法定相続分で分割することになります。特別受益や寄与分を主張したい場合は、この10年を意識します。相続税10か月・登記3年とは別の期限です。

出典法務省 民法等の一部を改正する法律moj.go.jp

評価から申告・売却までの流れ

相続不動産の評価から先の実務は、次の順で進みます。

  1. 財産の把握: 不動産(登記事項証明書・固定資産税課税明細書)、預貯金、有価証券などを一覧化する
  2. 不動産の評価: 土地は路線価方式か倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価額を算出する
  3. 遺産総額と基礎控除の比較: 相続税がかかるかを確認する
  4. 遺産分割協議: 相続人全員で誰が何を取得するか決め、協議書を作成する
  5. 相続登記: 不動産の名義を相続人に変更する(過去分は2027年3月末が期限)
  6. 相続税の申告・納付: 課税される場合、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う
  7. 売却の検討: 保有か売却かを決め、売却する場合は査定を取る

売却する場合、相続税評価額と実際の売却価格は別物です。実勢の売却価格は、市場の需給や物件の状態で決まります。相場観をつかむには、複数の不動産会社の査定を比べるのが実際的です。1社だけの査定では高いのか安いのか判断がつきません。

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売却で利益(譲渡所得)が出た場合、相続税の一部を売却時の取得費に加算できる「取得費加算」(相続税の一部を取得費に足せる特例。国税庁 No.3267)が使える場合があります。相続後、一定期間内の売却が条件です。詳しくは取得費加算の特例で相続不動産の譲渡所得税を抑える方法で整理しています。

また、被相続人が一人暮らしだった自宅を相続して売る場合は、空き家3000万円控除と相続人3人の減額改正もあわせて確認します。2027年12月31日までの譲渡が対象で、相続人が3人以上の場合は控除額が1人あたり2,000万円に減額される改正があります。

売却と保有のどちらが自分の状況に合うか迷う場合は、実家じまい診断で方向性を整理できます。

よくある失敗

評価額を時価と混同して相続税を過大に見積もる

土地の路線価は実勢価格より低めです。市場価格で計算して「相続税がかかる」と早合点し、慌てて売り急ぐケースがあります。まず相続税評価額で基礎控除と比べます。

小規模宅地等の特例を検討せずに申告する

自宅の土地で最大80%減額できる特例を見落とすと、本来不要な相続税を払う、あるいは過大に納めることになります。自宅を相続した場合は要件を確認します。

登記の期限(過去分2027年3月末)を見落とす

相続税の10か月ばかり意識して、登記の3年(過去分は2027年3月末)を後回しにすると、過料の対象になり得ます。相続税がかからない場合でも登記義務は残ります。

1社だけの査定で売却価格を決める

売却時、1社の査定だけでは価格の妥当性を判断できません。複数社を比べることで相場の幅が見えます。

よくある質問

相続税評価額と実際の売却価格はなぜ違うのですか?

相続税評価額は国が定めたルールで計算する価額で、土地は公示地価の8割程度を目安とする路線価などをもとにします。一方、売却価格は市場の需給や物件の状態で決まる実勢価格です。両者は目的が異なるため一致しません。

路線価と倍率方式のどちらを使うか自分で判断できますか?

対象地に路線価が設定されていれば路線価方式、設定されていない地域は倍率方式です。路線価の有無は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。ただし補正計算は複雑なため、確定は税理士に相談するのが確実です。

相続税がかからなければ不動産の評価は不要ですか?

相続税がかからない場合、相続税申告のための厳密な評価は不要です。ただし相続登記や遺産分割協議には評価の目安が役立ちます。また登記義務は相続税の有無にかかわらず残ります。

相続税の申告と登記の期限は同じですか?

別々です。相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内、相続登記は取得を知った日から3年以内(施行前の相続は2027年3月31日まで)です。混同しないよう、それぞれ確認します。

評価は税理士に頼まないとできませんか?

路線価図や固定資産税課税明細書を使えば概算は自分でも把握できます。ただし補正率や小規模宅地等の特例が絡むと計算が複雑になり、税額が大きく変わります。相続税がかかる可能性がある場合は税理士への相談が確実です。

まとめ

  • 土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で相続税評価額を出す
  • 土地の評価は実勢価格より低めに出るため、時価と混同しない
  • 相続税がかかるかは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除と遺産総額を比べる
  • 相続税申告は10か月、登記の過去分は2027年3月末が期限
  • 売却価格は評価額と別物のため、複数社の査定で相場を確認する
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