実家売却でやってはいけない7つの落とし穴と回避策

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相続した実家を売るとき、判断の誤りが手取り額を大きく左右する。 手続きの遅れで税制優遇を使いそびれたり、業者選びを誤って査定額を下げたりするケースは珍しくない。 実家売却で実際に起きやすい7つの失敗パターンと、その具体的な回避策を整理する。

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目次

実家売却の選択肢と全体像

まず「売る」と決めたとき、どの方法を選ぶかで手取り額・期間・手間が変わる。 落とし穴の話に入る前に、主な選択肢を全体像として押さえておく。

方法 特徴 向いているケース
仲介売却 市場価格に近い金額で売れる可能性が高い。成約まで3〜6か月程度かかることが多い 急がず、できるだけ高く手放したい
不動産買取 業者が直接購入するため早期決済が可能。価格は仲介より低くなる傾向がある 早期決済・現状渡しを優先したい
一括査定 複数社の査定を同時に取得し、比較できる 相場観を把握してから業者を選びたい

使い分けの目安

急ぎでなく、税制優遇の適用余地があるなら仲介が有利になることが多い。 一方、遠方に住んでいて維持管理が難しい場合は、買取で早期に手放すことにも合理性がある。 どちらが有利かは物件の状態・築年数・立地によって変わるため、複数の業者の意見を比べることが判断の出発点になる。

実家売却の全体的な流れや選択肢については、実家売却の基本ガイドで詳しくまとめている。


落とし穴①〜③:税金・制度の見落とし

実家売却の失敗で最も金額インパクトが大きいのが、税制優遇の使いそびれだ。 知っているかどうかで、手取り額が数百万円単位で変わることがある。

落とし穴① 空き家3,000万円特別控除を使いそびれる

相続した実家(被相続人が一人で居住していた家屋)を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。

2024年改正の主な変更点

  • 適用期限が 2027年12月31日まで延長された
  • 相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円に縮小(2024年1月1日以後の譲渡から)
  • 譲渡後翌年2月15日までに耐震改修または家屋の取壊しが行われれば、譲渡時点で未改修でも適用できる(買主による改修・取壊しも可)

出典国税庁 タックスアンサー No.3306nta.go.jp 出典国土交通省mlit.go.jp

回避策: 相続開始後、早期に要件を確認する。特に「被相続人が一人で居住していた」「昭和56年5月31日以前に建築された」などの条件が厳しいため、税理士への確認が最初のステップだ。適用条件は個人の状況によって異なるため、必ず専門家に相談してほしい。

落とし穴② 居住用財産の3,000万円控除と混同する

よく混同されるのが、自分が住んでいた家を売る場合の3,000万円控除(マイホーム特例)と、上記の空き家特例の違いだ。

  • マイホーム特例:売主自身が居住していた家を売る場合に適用
  • 空き家特例:相続した親の家(被相続人居住用財産)を売る場合に適用

適用要件・手続きが異なるため、どちらが自分のケースに該当するかを確認しないまま進めると、特例の申請漏れや誤った計算につながる。確定申告の期限(売却翌年の3月15日)を過ぎると適用できない点にも注意が必要だ。

落とし穴③ 相続登記を後回しにして過料リスクを抱える

2024年4月1日から相続登記が義務化された。 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、施行前に相続した不動産については2027年3月31日までに申請する必要がある。 正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となる。

出典政府広報オンラインgov-online.go.jp 出典法務局moj.go.jp

回避策: 相続登記が完了していない不動産は売却できない。売却の準備と並行して、早期に司法書士へ相談することが最短ルートだ。戸籍収集が間に合わない場合は「相続人申告登記」で義務を仮に履行できる。

相続した不動産の売却手続き全体については、相続不動産の売却ガイドで詳しく解説している。


落とし穴④〜⑤:業者選びのミス

税制と並んで手取り額に影響するのが、業者選びの失敗だ。

業者選びで確認すべき3つのポイント

確認項目 確認方法
①宅地建物取引業免許の有無 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索
②類似物件での実績 担当者に実例を聞く(地域・築年・面積が近い案件)
③複数社からの査定取得 最低3社以上を比較する

落とし穴④ 査定は1社だけで決めてしまう

査定価格は業者によって異なる。1社だけで決定すると、相場より低い価格で売却してしまうリスクがある。 また、査定額はあくまで「業者の見込み」であり、最終的な成約価格を確約するものではない。

回避策: 複数社から査定を取得し、価格の根拠(比較事例・立地評価・建物状態)を確認する。根拠のない断定的な説明をする業者には慎重に対応する。

落とし穴⑤ 決断を急がせる業者に流される

「今月中に決めないと値段が下がる」「他に購入希望者がいる」といった形で、契約を急かすアプローチをとる業者がいる。 客観的な根拠を示さずに決断を促す行為は、消費者保護の観点から問題があるとされる。

出典消費者庁 景品表示法caa.go.jp

回避策: 急かされても、納得できる説明がない限り即決しない。疑問点は書面で回答を求め、契約書を持ち帰って確認する時間を取る。


落とし穴⑥〜⑦:手続きの遅れと事前準備の不足

落とし穴⑥ 物件の状態を把握せずに売り出す

実家を長期間放置していた場合、以下の問題が発覚してから価格交渉が難しくなるケースがある。

  • 雨漏りや基礎のひび割れなどの瑕疵(かし)
  • 境界の未確定(隣地との境界線が不明確な状態)
  • 残置物・家財の大量残存

特に告知義務は重要だ。売主は知っている瑕疵を買主に伝える義務がある。これを怠ると、引き渡し後に契約不適合責任を問われるリスクがある。

回避策: 売り出し前に物件を確認し、気になる点は仲介業者を通じてインスペクション(住宅診断)を検討する。残置物は早期に整理を始める。告知が必要な事項は売買契約書の「物件状況報告書」に正確に記載する。

落とし穴⑦ 費用・税金を計算せずに手取り額を見誤る

売却益が出た場合の税金(譲渡所得税)を考慮せずに「いくら手元に残るか」を計算していないと、確定申告後に想定外の納税が発生する。

実家売却時の主な費用・税金の目安

項目 概算
仲介手数料 売却価格の3%+6万円(上限・税別)
登記費用(抵当権抹消等) 数万円〜
譲渡所得税 取得費・譲渡費用を差し引いた利益の20.315%(所有期間5年超の長期譲渡: 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)または39.63%(5年以下の短期譲渡: 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)。各種特例を適用した後の税額は個別に計算が必要
解体費用(更地渡しの場合) 木造一戸建て30坪程度で100〜200万円が目安(地域・構造により異なる)

譲渡所得税の税率・控除額は個人の状況や特例の適用可否によって大きく変わるため、概算であっても税理士への確認を経ることを勧める。


実家売却の進め方

落とし穴を回避しながら進めるための手順を整理する。

  1. 相続登記の完了確認 名義変更が完了していることを確認する。未完了の場合、司法書士に依頼する
  2. 税制優遇の適用可否の確認 空き家特例・マイホーム特例のどちらが使えるか、税理士に相談する
  3. 物件状態の把握 雨漏り・境界・残置物を事前に整理し、インスペクションを検討する
  4. 複数社への査定依頼 3社以上に査定を依頼し、価格と根拠を比較する
  5. 媒介契約の締結 業者の免許・実績を確認したうえで契約する。専属専任・専任・一般の違いも確認する
  6. 売買契約・引き渡し 物件状況報告書を正確に記載し、告知義務を果たす

よくある失敗

「急いで相続放棄したが、不動産だけ放棄できないと知った」 相続放棄は原則として相続財産の全部に対して行う手続きであり、「不動産だけ放棄する」ことはできない。実家を手放したい場合でも相続放棄でなく売却や相続土地国庫帰属制度の活用を検討する必要がある。

「仲介を1社に絞ったら3か月間売れず、結局値下げした」 専属専任媒介契約は業者にとって独占的な扱いになるが、売主への報告義務(1週間に1回以上)がある。活動報告が不十分な業者に独占させると機会損失につながる。

「解体してから売ったら固定資産税が上がった」 建物が建っている土地は住宅用地の特例で固定資産税が軽減されているが、更地にすると特例が外れ、税額が増える場合がある。解体の前に年間の固定資産税を試算しておく。

「買取価格を承諾したあとで相場が上がっていたと気づいた」 買取価格は交渉の余地がある。複数の買取業者に見積もりを依頼し、価格の根拠を比較することが、手取りの差につながる。

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出典裁判所 相続の放棄の申述courts.go.jp

よくある質問

相続登記が終わっていないと売却できませんか?

原則として、売主名義での登記が完了していないと売買契約を締結できません。司法書士に依頼して相続登記を先行させるか、売買と同日に登記を行う段取りを組む方法が一般的です。2027年3月31日の期限も控えているため、早期の手続きを勧めます。

空き家3,000万円特別控除と居住用3,000万円控除は同時に使えますか?

同一年に両方を適用することはできません。また、空き家特例は被相続人が一人居住していたことや昭和56年5月31日以前の建築等、厳しい要件があります。どちらが適用できるかは税理士に確認してください。

査定額と実際の成約価格は異なるのですか?

異なります。査定額は業者が見込む売り出し価格の目安であり、実際の成約価格は市場の反応・交渉・物件状態によって変わります。査定額を成約価格と混同して計画を立てると、費用計算がずれることがあります。

実家を更地にしてから売るべきですか?

更地にすることで買主の間口が広がる場合がある一方、解体費用の負担・固定資産税の特例喪失というデメリットもあります。築古物件は現状渡しのまま買取業者に売る選択肢も検討し、複数の試算を比較することを勧めます。

売却前に親族間で話し合いは必要ですか?

共有名義の不動産は、全員の同意がなければ売却できません。相続で複数の相続人が共有になっている場合、事前に遺産分割協議を済ませ、売却方針を共有しておかないと手続きが止まります。


まとめ

実家売却の落とし穴は「税制の使いそびれ」「業者選びの失敗」「手続きの遅れ」の3つにまとめられる。

  • 空き家3,000万円特別控除は2027年12月31日までが期限。2024年改正で相続人3人以上は控除額が縮小されている
  • 相続登記は2027年3月31日までが義務化期限。怠ると10万円以下の過料の対象となる
  • 業者選びは免許確認・実績確認・複数社比較の3点が最低ライン
  • 急かされても即決せず、価格の根拠と物件状態を確認してから判断する

まず相場観を把握したいなら、複数社への一括査定が出発点になる。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000001_00016.html
  • 政府広報オンライン「相続登記が義務化されました」 https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/2.html
  • 法務局「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
  • 消費者庁「景品表示法について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
  • 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

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