借地権の売却は、普通の持ち家と違って「地主」という第三者が必ず絡みます。だから「誰に売るか」で条件が変わる。まず全体像をつかんでください。
ルート①:第三者に仲介で売る(価格重視)
不動産仲介会社を通じて、一般の買い手に売る方法です。4つの中で最も高く売れる可能性があるのが利点。ただし、借地権を第三者に譲渡するには地主の承諾が必要で、承諾料(借地権価格の10%前後)がかかります。また、借地権付きの物件は買い手が住宅ローンを組みにくいなどの事情で、買い手が見つかるまで時間がかかることもあります。「高く売りたい・急がない」人向けです。
ルート②:地主に買い取ってもらう
土地の所有者である地主に、借地権を買い取ってもらう方法です。地主が借地権を手に入れれば、土地を完全に自分のものとして自由に使えるようになるため、地主にメリットがあり、条件が合えばスムーズに進みます。地主への売却なら、承諾料は不要(そもそも地主自身が買うので承諾の問題が起きない)。
ただし注意点があります。地主は「土地の所有者」という強い立場なので、交渉を有利に進めやすく、買取価格が相場より安くなりがちです。「地主と良好な関係で、揉めずに手放したい」人向けですが、価格は妥協が要ることが多い。
ルート③:地主と一緒に「同時売却」する(高値が狙える)
これが、意外と知られていない有力な選択肢です。あなたの「借地権」と、地主の「底地(貸している土地の所有権)」を、同じタイミングで一緒に第三者へ売る方法。買い手から見ると、土地も建物も完全な所有権として手に入るので、普通の物件と同じ扱いになり、借地権単体で売るより高く売れます。住宅ローンも組みやすくなるので買い手も見つかりやすい。しかも所有権を一体で移すため、承諾料が不要なケースも多い。
条件は、地主も「底地を手放してもいい」と思っていること。そして、売却代金を借地権と底地でどう分けるか(按分)を、事前に地主と合意しておくこと。ここがまとまれば、地主・借地人の双方にとっていちばん得な売り方になり得ます。地主に底地を売る気があるか、一度打診してみる価値があります。
ルート④:買取業者に売る(早い・確実だが安い)
借地権を専門の買取業者に直接売る方法です。業者が地主との承諾交渉を代行してくれるので手間がかからず、現金化が早いのが最大の利点。契約不適合責任(売った後に欠陥が見つかったときの責任)を免除してもらえることも多く、「とにかく早く・確実に手放したい」人に向きます。
ただし、価格は正直に言うと安い。買取業者の価格は、更地価格の50%程度が相場とされます。業者は「安く仕入れて高く売る」ことで利益を得るビジネスなので、これは構造的なものです。早さと確実さを、価格で買っている、と理解してください。急がないなら、①③の方が手取りは大きくなります。
どう選ぶか
整理するとこうです。高く売りたい・急がない → ①第三者仲介か③同時売却。揉めずに手放したい・地主と良好 → ②地主に売却。とにかく早く確実に → ④買取業者(ただし安い)。 借地権の売却は、承諾料・税金・仲介手数料などを差し引いた「最終的な手取り額」で比べることが大事です。「早く売れる」の一言に飛びついて、数百万円の差を見逃さないように。まずは自分の優先順位(高く・早く・揉めずに)を決めてから、ルートを選んでください。そもそも売るべきか迷っているなら、旧法の借地権は借主に有利で持ち続ける価値もあるため、「旧借地権 買ってはいけない」の真相 と併せて判断してください。相続を経て売却する全体の流れは 借地権の実家を相続・売却するには にまとめています。
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よくある質問
借地権はいちばん高く売るなら、誰に売ればいいですか?
一般的には、第三者への仲介売却か、地主の底地と一緒に売る「同時売却」が高く売れます。特に同時売却は買い手が完全な所有権を得られるため高値がつきやすく、承諾料が不要なケースも多いです。逆に買取業者は早くて確実ですが、更地価格の50%程度と安くなりがちです。
地主に売るのと、第三者に売るのは何が違いますか?
地主に売ると承諾料が不要でスムーズですが、地主が交渉上有利なため価格が安くなりがちです。第三者に仲介で売ると高く売れる可能性がありますが、地主の承諾と承諾料(借地権価格の10%前後)が必要で、買い手探しに時間がかかることもあります。
「同時売却」とは何ですか?なぜ高く売れるのですか?
借地人の借地権と、地主の底地(貸している土地の所有権)を同じタイミングで一緒に第三者へ売る方法です。買い手は土地・建物の完全な所有権を得られるため普通の物件と同じ扱いになり、借地権単体より高く売れ、住宅ローンも組みやすくなります。ただし売却代金の分け方を地主と事前に合意する必要があります。
買取業者はなぜ安いのですか?
買取業者は「安く仕入れて再販・活用して利益を得る」ビジネスモデルだからです。借地権の買取価格は更地価格の50%程度が相場とされます。その代わり、地主との交渉代行・スピード・契約不適合責任の免除といった利点があります。早さと確実さを価格で買う形だと理解し、急がないなら他のルートと手取りを比べてください。
出典国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(借地権割合)rosenka.nta.go.jp 出典e-Gov 借地借家法(借地権の譲渡)laws.e-gov.go.jp
この記事は特定の買取業者・不動産会社への誘導を目的としていません。借地権の売却は、契約の種類・地主との関係・税金によって最適なルートが変わります。ご自身の状況に即した判断には、不動産鑑定士・税理士・弁護士など、いずれの会社にも属さない立場の専門家にご相談ください。