相続するだけなら、承諾料は「いらない」
ここが、いちばん誤解されていて、いちばんお金に直結するところです。
親が持っていた借地権を相続する場合、地主の承諾は不要で、承諾料(名義書換料)も原則として払う必要がありません。 なぜなら、相続は「売買や贈与で権利を他人に移す=譲渡」ではなく、亡くなった方の権利をそのまま引き継ぐものだからです。法律上、譲渡にあたらないので、承諾も対価も要らない。
ところが実務では、借地人が変わるタイミングで「名義変更料を払ってほしい」と言ってくる地主が少なくありません。相続人がそれを知らずに応じてしまうと、本来払わなくていいお金を払うことになる。相続で借地権を引き継いだら、まず「承諾料は原則不要」と知っておく。 これだけで、数十万円〜百万円単位の損を防げることがあります。
(ただし、地主に対して、名義が変わったことの通知や、契約書の名義書換の相談は、今後の関係のためにしておくのが円満です。「払う義務はない」ことと「何も言わなくていい」ことは別、と考えてください。)
売るときは、地主の承諾と承諾料が必要
一方、相続した借地権の家を第三者に売るときは、話が変わります。借地権を他人に譲渡するには、地主の承諾が必要です(承諾なく勝手に売ると、契約解除の理由になり得ます)。
そして承諾と引き換えに、譲渡承諾料(名義書換料)を地主に払うのが慣行です。相場は、借地権価格のおおむね10%前後(東京などの大都市圏。裁判実務でもこの水準が基準にされています)。
借地権価格とは、その土地が更地だった場合の価格に「借地権割合」(地域ごとに国税庁が定める割合。6割などが多い)を掛けたものです。たとえば更地価格3,000万円・借地権割合60%なら、借地権価格は1,800万円。承諾料はその10%=180万円、といった計算になります。まとまった額なので、売却の手取りを考えるうえで無視できません。
地主が承諾してくれないときは
「売りたいのに地主が承諾してくれない」——これも借地権でよくある壁です。でも、地主の一存で完全に売却をブロックできるわけではありません。
地主が正当な理由なく承諾を拒む場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を求める手続きがあります(借地借家法19条)。裁判所が許可を出せば、地主の承諾がなくても売却を進められます(その際、裁判所が承諾料に相当するお金の支払いを地主に対して命じます)。時間はかかりますが、「地主が首を縦に振らないから一生売れない」わけではない、と知っておくと交渉の心持ちが変わります。
この先の詳しい記事
- 借地権の売却 — 誰に売るか(第三者・地主・買取業者)で手取りがどう変わるか
- 借地権の相続 — 名義・遺産分割・地主との関係の整え方
- 底地の売却(地主側の視点) — 借地権と底地を同時に売る方法
- 「旧借地権 買ってはいけない」の真相 — 相続で持っている人が知るべきこと
関連記事:
よくある質問
親の借地権を相続したら、地主に承諾料を払う必要がありますか?
原則として不要です。相続は「譲渡」ではなく権利をそのまま引き継ぐものなので、地主の承諾も承諾料(名義書換料)も要りません。ただし実務では請求してくる地主もいるため、「相続では不要」と知っておくことが大切です。なお、名義が変わったことの通知や相談は、円満な関係のためにしておくとよいでしょう。
借地権の家を売るとき、地主の承諾は必要ですか?
必要です。借地権を第三者に譲渡するには地主の承諾が要り、承諾なく勝手に売ると契約解除の理由になり得ます。承諾と引き換えに譲渡承諾料(借地権価格の10%前後が相場)を払うのが慣行です。
譲渡承諾料はいくらくらいですか?
借地権価格のおおむね10%前後が相場です(大都市圏。裁判実務でもこの水準が基準)。借地権価格は、更地価格×借地権割合(国税庁が地域ごとに定める割合)で計算します。たとえば更地3,000万円・借地権割合60%なら借地権価格1,800万円、承諾料はその10%で約180万円です。
地主が売却を承諾してくれない場合はどうすればいいですか?
地主が正当な理由なく承諾を拒む場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を求める手続きがあります(借地借家法19条)。裁判所が許可すれば地主の承諾なく売却でき、その際は裁判所が承諾料相当の支払いを地主に命じます。時間はかかりますが、地主の一存で永久にブロックされるわけではありません。
出典e-Gov 借地借家法(第19条 土地の賃借権の譲渡の許可)laws.e-gov.go.jp 出典国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(借地権割合)rosenka.nta.go.jp
この記事は特定の買取業者・不動産会社への誘導を目的としていません。借地権は契約内容や地主との関係、地域の慣行によって扱いが変わります。ご自身の状況に即した判断には、弁護士・税理士・不動産鑑定士など、いずれの会社にも属さない立場の専門家にご相談ください。