借地権は「建物は自分・土地は借り物」という二重構造なので、相続の手続きも普通の持ち家と少し違います。順に見ていきます。
地主の承諾も承諾料も、相続では不要
まず、いちばんお金に関わるところ。借地権を相続するのに、地主の承諾は要りません。承諾料(名義書換料)も、原則として払う必要がありません。 相続は、亡くなった方の立場をそのまま引き継ぐもので、権利を他人に移す「譲渡」ではないからです。
にもかかわらず、借地人が代替わりするタイミングで「名義書換料を払ってほしい」「契約を結び直したい」と言ってくる地主がいます。これに応じる法的義務はありません。 相続の事実を理由に立ち退きを求められても、従前の契約がそのまま引き継がれるので、応じる必要はない。ここを知らないと、払わなくていいお金を払ってしまいます。
(第三者への売却・生前贈与・法定相続人以外への遺贈は「譲渡」にあたり、この場合は地主の承諾と承諾料が必要になります(詳しくは 借地権の売却 を参照してください)。相続と譲渡は別、と区別してください。)
建物の相続登記(名義変更)をする
手続きの流れは、①戸籍を集めて相続人を確定、②遺産分割協議で誰が借地権付き建物を引き継ぐか決める、③法務局で建物の相続登記、という順。建物の相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額×0.4%です(売買や贈与による移転だと2%になり、税率が違います)。
なお、古い建物で登記そのものがされていない(未登記の)場合は、先に表題登記という手続きが必要になります。この場合は土地家屋調査士の領域なので、専門家に相談してください。
遺産分割では「共有」を避ける
これは実務上とても大事な助言です。相続人が複数いるとき、借地権付き建物を兄弟などで「共有」にするのは避けて、誰か一人の単独名義にするのが強く推奨されます。
理由は、共有にすると、将来この借地権を売ったり、建て替えの承諾を地主と交渉したりするときに、共有者全員の合意が必要になり、話が複雑化するからです。ただでさえ地主との交渉がある借地権で、さらに共有者同士の足並みも揃えなければならなくなると、身動きが取れなくなる。遺産分割の段階で「誰が引き継ぐか」を決めて、単独名義にしておく。これが後々のトラブルを大きく減らします。すでに共有になっている、あるいは共有を避けられない事情がある場合は、共有名義の不動産の基本 で対処の型を確認してください。
地主への通知はしておく
承諾料は不要と書きましたが、「相続で名義が変わりました」という通知は、地主にしておくことを強くおすすめします。 法的義務ではありませんが、地代の振込名義を新しい相続人に変えておくなど、関係を整えておくと、将来の契約更新や建て替えの交渉がスムーズになります。「払う義務はない」ことと「何も伝えなくていい」ことは別です。地主との良好な関係は、借地権を持ち続けるうえでも、いずれ売るうえでも、資産になります。
相続税の対象になる
借地権は財産的価値のある権利なので、相続税の課税対象です。評価額は、その土地が更地だった場合の価格に「借地権割合」(国税庁が地域ごとに定める割合)を掛けて算出します。評価を誤ると相続税を払いすぎたり、逆に過少申告になったりするので、相続財産全体で申告が必要になりそうな場合は、税理士に評価を依頼するのが安全です。相続と売却を含めた全体の流れは 借地権の実家を相続・売却するには にまとめています。
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よくある質問
親の借地権を相続したら、地主に名義書換料を払う必要がありますか?
原則として不要です。相続は「譲渡」ではなく亡くなった方の立場を引き継ぐものなので、地主の承諾も名義書換料も要りません。代替わりを理由に請求されても応じる法的義務はなく、立ち退きを求められても従前の契約がそのまま引き継がれます。ただし第三者への売却・贈与・遺贈は「譲渡」となり承諾料が必要です。
借地権の相続で、何を名義変更すればいいですか?
建物の相続登記(名義変更)をします。借地権そのものは登記されていないことが多く、建物の名義を相続人へ変えることで借地権を引き継いだことを整理します。まず法務局で建物の登記を確認してください。登録免許税は固定資産税評価額×0.4%です。未登記の建物なら先に表題登記が必要です。
兄弟で借地権を共有で相続してもいいですか?
おすすめしません。共有にすると、将来売却するときや、建て替えの承諾を地主と交渉するときに共有者全員の合意が必要になり、話が複雑化します。地主との交渉に加えて共有者間の調整も必要になると身動きが取れなくなるため、遺産分割の段階で誰か一人の単独名義にするのが強く推奨されます。
借地権にも相続税はかかりますか?
かかります。借地権は財産的価値のある権利で、相続税の課税対象です。評価額は、更地価格×借地権割合(国税庁が地域ごとに定める割合)で算出します。評価を誤ると納めすぎや過少申告になるため、相続税の申告が必要になりそうな場合は税理士への相談をおすすめします。
出典国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(借地権割合)rosenka.nta.go.jp 出典e-Gov 借地借家法(借地権)laws.e-gov.go.jp
この記事は特定の買取業者・不動産会社への誘導を目的としていません。借地権の相続は、契約内容・地主との関係・相続税評価によって扱いが変わります。ご自身の状況に即した判断には、司法書士・税理士・弁護士など、いずれの会社にも属さない立場の専門家にご相談ください。